島津亜矢2008年特撰集

島津亜矢( 島津亞矢 ) 島津亜矢2008年特撰集歌詞
1.海ぶし

作詞:塚口けんじ
作曲:櫻田誠一

おなご雪浪 かいくぐり
岬がくれに 船を待つ
髪を束ねて 日暮れには
くずれ番屋で 飯を炊く
ヤンアレサー 追分の 海で鮭をとる
ヤンアレサー 男衆は 汗で銭をとる

砂にさらされ 転がって
浜にゃ涙の 廃船(ふね)一つ
飲んで踊った 万祝(まいわ)いも
爺(じ)さま婆(ば)さまの 語り草
ヤンアレサー 追分の 風に揺れながら
ヤンアレサー 男衆は 腰で舵を切る

おなご飛沫(しぶき)に 叩かれて
今日も大漁の 夢を抱く
凍る昆布を 引きながら
十の指から 血を流す
ヤンアレサー 追分の 海で鮭をとる
ヤンアレサー 男衆は 汗で銭をとる


2.袴をはいた渡り鳥

作詞:星野哲郎
作曲:市川昭介

西へ傾く 昨日は追うな
東に出てくる 明日を待て
そんなせりふで 決めては 決めてはいても
胸の真ン中 のぞいてみれば
みれん模様の 涙が泳ぐ
あンあ… 袴をはいた渡り鳥

どうせ誰かが 傷つくならば
代ってやろうか その役を
粋なつもりで かぶった かぶった笠を
笑うからすに 怨みはないが
好きで別れた あの娘が恋し
あンあ… 袴をはいた渡り鳥

人の弱身に つけこむ奴を
ゆるしておけない 性格(たち)なのさ
こんな血すじを さずけた さずけた親の
恩義ひとつを 心に抱いて
浮世七坂 倒れて起きる
あンあ… 袴をはいた渡り鳥


3.瞼の母(セリフ入り)

作詞:坂口ふみ緒
作曲:沢しげと

軒下三寸 借りうけまして
申しあげます おっ母さん
たった一言 忠太郎と
呼んでくだせぇ
呼んでくだせぇ たのみやす

「おかみさん 今何とか言いなすったね
親子の名のりがしたかったら
堅気の姿で尋ねて来いと言いなすったが
笑わしちゃいけねぇぜ
親にはぐれた子雀が
ぐれたを叱るは無理な話よ
愚痴じゃねぇ 未練じゃねぇ
おかみさん 俺の言うことを
よく聞きなせぇ
尋ね 尋ねた母親に
倅と呼んでもらえぬような
こんなやくざに 誰がしたんでぇ」

世間の噂が 気になるならば
こんなやくざを なぜ生んだ
つれのうござんす おっ母さん
月も雲間で
月も雲間で もらい泣き

「何を言ってやんでぇ
何が今更、 忠太郎だ 何が倅でぇ
俺らにゃおっ母はいねぇんでぇ
おっ母さんは 俺の心の底に居るんだ
上と下との瞼を合わせりゃ
逢わねぇ昔の
やさしいおっ母の面影が浮かんでくらぁ
逢いたくなったら
逢いたくなったら 俺ァ瞼をつむるんだ」

逢わなきゃよかった 泣かずにすんだ
これが浮世と いうものか
水熊横丁は 遠灯り
縞の合羽に
縞の合羽に 雪が散る

おっ母さん


4.大器晩成

作詞:星野哲郎
作曲:原譲二

枝を張るのは まだ早い
いまはしっかり 根をのばせ
大器晩成 あしたにかける
夢と希望の 大空を
雲が流れる 悠々と

まぐれ当たりも あるけれど
それを狙えば 遠まわり
大器晩成 地道(じみち)な努力
ものをいう日が くるまでは
牛の歩みを くりかえせ

笑うときには 豪快に
嘘も真実(まこと)の 一里塚
大器晩成 ただまっしぐら
若く凛々(りり)しい 足跡を
刻みつけよう この大地(だいち)


5.流れて津軽

作詞:松井由利夫
作曲:チコ早苗

よされよされと しばれて積もる
雪はおんなの 恨み花
三味は抱いても 情けは抱けぬ
みれん深浦 鯵ヶ沢
よされ よされと… 流れて津軽

よされよされと 吹雪いて見えぬ
三味をたよりの くどき唄
雪の向こうに かくれた春を
せめて手さぐり 五所川原
よされ よされと… 流れて津軽

よされ よされと… 流れて津軽


6.都会の雀

作詞:吉岡治
作曲:杉本眞人

雀 雀 都会の雀
雀 雀 夜明けの雀

飾りまくった ガラスの街に
サイレンばかり 駆けぬける
呼ぶ名もなくて 倒れた道で
バカな涙が あふれて熱い
雀 雀 都会の雀
眠れないのか 寒風(さむかぜ)で
雀 雀 俺ンち来いよ
あったか西日の 裏窓に

夢のかたちも あいつのことも
生きてくうちに 脱け落ちた
そのうちケリは 必ずつける
バカな希(のぞ)みが からだに悪い
雀 雀 夜明けの雀
飛べる蒼空 あるのなら
雀 雀 俺ンち来いよ
朝日が弾ける 裏窓に

雀 雀 都会の雀
眠れないのか 寒風で
雀 雀 俺ンち来いよ
あったか西日の 裏窓に 裏窓に


7.お吉

作詞:志賀大介
作曲:村沢良介

(台詞)
ひどい!ひどいじゃございませんか
いくら私がハリスさんの処へ行く事を
承知したからといって…

涙を積み荷の 黒船が
おんなの運命(さだめ)を変えました
浜に浜木綿 咲いたけど
泣いて爪噛む 爪木崎
伊豆はしぐれる 下田は曇る
ああ お吉は 辛(つ)ろうございます

鶴さんそりゃァ あんまりだァ
たとえ 天城の山が崩れても
このお吉を 離すもんかと言った
あれは嘘だったのかい
あゝ こんな哀しい筋書きを 誰が書いたんだい
夢さ 夢にきまってるよ…

お酒よおまえに 罪はない
この世の仕組みに 毒がある
うわさ指さす 石つぶて
耐えて下田の 糸やなぎ
生きる証の 灯りがほしい
ああ お吉に 明日は見えません

(台詞)
あゝ お酒がほしいよう
お酒で何もかも 忘れてしまいたいのさ
愚痴も涙も涸れ果てました
あゝ あたしの人生って なんだったんだろうねぇ

名もない路傍の 草だって
季節が巡れば 春の顔
破れ三味線 黄八丈
泣くな下田の 明け烏
夢の続きは あの世とやらで
ああ お吉は もう泣きません

(台詞)
あゝ 寒い… 鶴さん 今行くからね


8.帰らんちゃよか

作詞:関島秀樹
作曲:関島秀樹

そらぁときどきゃ 俺たちも
淋しか夜ば過ごすこつも あるばってん
二人きりの 暮らしも長うなって
これがあたりまえのごつ 思うよ
どこかの誰かれが 結婚したとか
かわいか孫のできたて聞くとも
もう慣れた
ぜいたくば言うたら きりんなか
元気でおるだけ 幸せと思わんなら
それでどうかい うまくいきよっとかい
自分のやりたかこつば
少しはしよっとかい
心配せんでよか 心配せんでよか
けっこう二人で
けんかばしながら暮らしとるけん
帰らんちゃよか 帰らんちゃよか
母ちゃんもおまえのこつは
わかっとるけん

そらぁときどきゃ 帰ってきたり
ちょこちょこ電話ばかけてくるとは
うれしかよ
それにしたって 近頃やさしゅなったね
なんか弱気になっとっとじゃ なかつかい
田舎があるけん だめなら戻るけん
逃げ道にしとるだけなら 悲しかよ
親のためとか 年のせいとか
そぎゃんこつば 言訳にすんなよ
それでどうかい 都会は楽しかかい
今頃後悔しとっとじゃ なかっかい
心配せんでよか 心配せんでよか
父ちゃんたちゃ
二人でなんとか暮らしてゆけるけん
帰らんちゃよか 帰らんちゃよか
今度みかんばいっぱい 送るけん

心配せんでよか 心配せんでよか
親のために おまえの生き方かえんでよか
どうせおれたちゃ 先に逝くとやけん
おまえの思うたとおりに 生きたらよか


9.元禄名槍譜 俵星玄蕃

作詞:北村桃児
作曲:長津義司

槍は錆びても 此の名は錆びぬ
男玄蕃の 心意気
赤穂浪士の かげとなり
尽す誠は 槍一筋に
香る誉れの 元禄桜

姿そば屋に やつしてまでも
忍ぶ杉野よ せつなかろ
今宵名残りに 見ておけよ
俵崩しの 極意の一手
これが餞(はなむ)け 男の心

涙をためて振り返る
そば屋の姿を呼びとめて
せめて名前を聞かせろよと
口まで出たがそうじゃない
云わぬが花よ人生は
逢うて別れる運命とか
思い直して俵星
独りしみじみ呑みながら
時を過ごした真夜中に
心隅田の川風を
流れてひびく勇ましさ
一打ち二打ち三流れ
あれは確かに確かにあれは
山鹿流儀の陣太鼓。

「時に元禄十五年十二月十四日、
江戸の夜風をふるわせて、響くは山鹿流儀の陣太鼓、
しかも一打ち二打ち三流れ、思わずハッと立ち上がり、
耳を澄ませて太鼓を数え、おう、正しく赤穂浪士の討ち入りじゃ、
助太刀するは此の時ぞ、もしやその中にひるま別れたあのそば屋が
居りわせぬか、名前はなんと今一度、
逢うて別れが告げたいものと、
けいこ襦袢(じゅんばん)に身を固めて、段小倉の袴、股立ち高く取り上げし、
白綾たたんで後ろ鉢巻き眼のつる如く、なげしにかかるは先祖伝来、
俵弾正鍛えたる九尺の手槍を右の手に、
切戸を開けて 一足表に踏み出せば、
天は幽暗地は凱々たる白雪を蹴立てて 行く手は松坂町…」
吉良の屋敷に来て見れば、今、討ち入りは真最中、
総大将の内蔵之助(くらのすけ)。
見つけて駆け寄る俵星が、天下無双のこの槍で、
お助太刀をば致そうぞ、
云われた時に大石は 深き御恩はこの通り、厚く御礼を申します。
されども此処は此のままに、
槍を納めて御引上げ下さるならば有難し、
かかる折しも一人の浪士が雪をけたてて
サク、サク、サク、サク、サク、サク、サク、――、
「先生」「おうッ、そば屋か」

いや、いや、いや、いや、襟に書かれた名前こそ、
まことは杉野の十兵次殿、わしが教えたあの極意、
命惜しむな名をこそ惜しめ、立派な働き祈りますぞよ、
さらばさらばと右左。赤穂浪士に邪魔する奴は何人(なにびと)たりとも
通さんぞ、橋のたもとで石突き突いて、 槍の玄蕃は仁王立ち。

打てや響けや 山鹿の太鼓
月も夜空に 冴え渡る
夢と聞きつつ 両国の
橋のたもとで 雪ふみしめた
槍に玄蕃の 涙が光る


10.愛染かつらをもう一度

作詞:星野哲郎
作曲:新井利昌

花と嵐の 青春を
涙と共に 生きるとき
父さんあなたの 主題歌だった
古い艶歌が わかります
いつかいっしょに 唄いましょうね
愛染かつらを もう一度

灯りさざめく 東京の
日暮れは夢の 吹き溜まり
父さん私は あなたの娘
負けはしないと 唇を
噛めば心に 聞こえてきます
愛染かつらの あの歌が

真実(まこと)つくした男道
破れたけれど 悔いはない
俺にはかわいい おまえがいると
酔えば口癖 お父さん
どうぞ元気で 唄ってほしい
愛染かつらを いつまでも


11.憂き世春秋

作詞:新本創子
作曲:三島大輔

風が頬うつ 雨が泣く
あなたの背中に 隠れて越える
憂き世春秋 ふたり坂
いのち連れ添う しあわせに
賭けて悔いない 女です

いつかあなたの 胸に咲く
雪割り草だと 云われてみたい
憂き世春秋 ふたり坂
こころ寄せあい 寒い夜は
ともに飲みたい このお酒

苦労ひとつに 夢がある
笑顔をあなたと たやさずいたい
憂き世春秋 ふたり坂
花の咲く日へ 七曲がり
明日を信じて 生きてゆく


12.娘に…

作詞:吉幾三
作曲:吉幾三

幸せに なるんだよ 二人してきっと
涙拭き 笑い顔 絶やさずいいな
母さんと話したか 女ゆえ努め
甘えたか ありがとう さよなら言ったか
寒い北の はずれ町
体こわさず 達者でな
みんな想い出 持って行け
写真一枚 あればいい

背中より でかかった 赤いランドセル
雨の中 泣いていた 学校帰りよ
夢だった二十年 ありがとう我が娘(こ)
長い旅 疲れたら 時々帰れ
明日(あす)の朝まで 飲んでるよ
別れの朝だ 起こしてくれよ
みんな想い出 持って行け
写真一枚 あればいい
写真一枚 あればいい…


13.海で一生終わりたかった

作詞:星野哲郎
作曲:船村徹

甘い恋など まっぴらごめん
親のない子の 見る夢は
小さな貨物(カーゴ)に 乗り組んで
港々で 恋をして
海で一生 終わりたかった

五体(からだ)こわして 船から降りて
陸(おか)にあがった かっぱだよ
海原とおく 眺めては
無念残念 くやし泣き
海で一生 終わりたかった

海は海でも ネオンの海は
俺にゃちっとも なじめない
海には母が いるという
おとぎ噺を 追いかけて
海で一生 終わりたかった


14.感謝状~母へのメッセージ~


15.富士

作詞:田久保真見
作曲:岡千秋

樹齢百年 そびえる幹も
ちいさな芽から はじまった
裸一貫 何にもなけりゃ
何でもできるよ ねえあんた
遥かに見える 富士山を
てのひらに乗せて 春を待つ

月の満ち欠け 流れる星も
大きな天の 懐(ふところ)で
夢に一筋 こうだと決めりゃ
何とかなるさと 腹くくれ
遥かに見える 富士山を
てのひらで掴み 夏をゆく

ひとみ凝らして 見えないものは
ひとみを閉じて 胸に訊く
男一匹 勝負の時は
私の命も さあ賭けろ
遥かに見える 富士山に
てのひらを伸ばし 冬を越す